
障害者雇用において「本来業務に適性のある人材の採用が可能か」という問いは、障害者雇用を“配慮ありきの特例的業務”としてではなく、企業の戦力として活かせるかを問う重要な視点です。軽作業以上の仕事ができる能力が高い人はいるが、障害者である以上、企業が無理しないで良い程度の配慮は必要です。「業務の切出し」以外の観点からこの問いについて考えてみたいと思います。
検証:本来業務への適性採用は可能か(業務の切出し以外)
観点①:マッチング精度の向上
- 高い専門スキルや経験を持つ人も多く、「障害=軽作業向き」とする先入観が適性判断を妨げている。
- 求人要件と障害特性の適合を、人材紹介会社・ハローワーク・就労支援事業所などと連携しながら丁寧に行うことで、本来業務へのマッチングは十分可能。
観点②:多様な障害種別と職種の相性
- 例:発達障害のある人が、ルールの明確な作業(プログラミング、品質管理など)で高い成果を示す
- 身体障害者は、一般の事務や営業職でも適応しやすく、ICTを活用することでより能力を発揮可能。
観点③:合理的配慮と職場環境の調整で実現性が高まる
- 「配慮次第」で、職場環境やコミュニケーション手段、評価の仕組みを調整すれば、多くの職種が可能
- 配慮事例:テレワーク、フレックスタイム、チャットでの報連相導入など。
観点④:ジョブコーチ・職場適応援助者の活用
- 適性のある障害者が職場に定着し、能力を発揮するには、初期段階の適応支援が重要。
- 「ジョブコーチ」を活用することで、上司・同僚との橋渡しや業務理解支援が可能になり、本来業務への従事を円滑にする。
本来業務での障害者採用が可能な場合の雇用の進め方
ステップ1:採用前のマッチング強化
- 障害特性と業務特性のマッチを精査し、「できること」「できないこと」を明文化。
- 面接・実習・職場体験を組み合わせた評価を行う。
ステップ2:職場への情報共有と配慮事項の事前整理
- 「過剰な忖度」ではなく、「具体的な配慮」のみに絞って職場に説明。
- 同僚・上司に対して啓発研修を実施することで、誤解や無理解を防ぐ。
ステップ3:段階的な業務アサインと評価制度の整備
- 本来業務にいきなり100%ではなく、段階的にステップアップ可能な仕組みを設ける。
法定雇用率未達の企業への助言
助言①:「できる人材」との出会いがない=採用ルートの再考を
- ハローワーク以外に、障害者専門の人材紹介会社、就労支援事業所との連携を強化。
- 採用イベント、オンライン面接、企業説明会なども活用して母集団を広げる。
助言②:「軽作業ありき」からの脱却
- 本来業務に対応可能な人材は多数存在。
- まずは社内業務の見直しと、過度に“障害者向けの作業”に限定しない視点の導入を促す。
助言③:受け入れ準備を整えれば戦力になる
- 特別扱いではなく、適切な配慮と適応支援で本来業務に携わることは可能。
- 職場での成功事例(ベストプラクティス)を他企業や支援機関から学ぶ。
本来業務に適性を持つ障害者の採用は、「業務の切出し」がなくても「的確なマッチングと合理的配慮」「多様な採用ルートの活用 」、「社内理解の促進と柔軟な職場設計」を行うことで十分に可能です。採用戦略の転換と、障害者を“可能性ある人材”として捉える意識改革が重要です。


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