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ほんとうに営業していると言えるのか 〜見たり聞くだけでその事業所の中身がある程度わかります〜

最近の障害者就労支援事業者の相次ぐ不正発覚については同業者として大変恥ずかしい限りでございます。
しかしながらこれはまだいろんな意味で氷山の一角だと思っております。

今回のブログは自戒も含めて書いております。

新聞紙面では不正受給といった犯罪から取り上げられておりますが、それは結果のひとつであり、問題は障害者就労支援事業所として認可されている事業所が本来の目的を果たしながら運営できているかどうかだという点です。

弊社はA型事業所ですのでA型事業所についてスポットを当ててみたいと思います。


【就労継続支援A型事業所】
企業等に就労することが困難な障害のある方に対して、雇用契約に基づく生産活動の機会の提供、知識及び能力の向上のために必要な訓練などを行う。
このサービスを通じて一般就労に必要な知識や能力が高まった方は、最終的には一般就労への移行を目指す。
雇用契約あり/最低賃金担保
※引用「日本一元気な現場から学ぶ 積極的障がい者雇用のススメ」賀村研 著書


簡単に言えば障害者の方と雇用契約を結び、最低賃金以上を約束し、障害者の方が仕事や就労の訓練をしながら一般就労を目指すことを支援する事業です。


これに対し、就労移行支援事業所は基本訓練するのみ、B型事業所は仕事はしてもらうが雇用契約無し、最低賃金担保無しの工賃扱いです。

各々存在する目的や専門分野が異なりますので運営は大変でしょうが、こと事業経営においてはA型事業所が一番ハードルが高いと思っています。
一定の売上(社員の最賃分)を上げながらの運営ですから。


どの就労支援事業所も運営していく上で一部の費用を訓練等給付金というカタチで国から負担していただいております。
天井はありますが、皆様の税金から運転資金をいただいているのです。


A型事業所でいうと営業日数や利用人数、運営方法にもよりますが、毎月250万。
多いところは400万近く入る事業所もあるでしょう。


すごいですよね、事業規模にもよりますが、販管費の大半を国が出してくれているという構造です。

もちろんその事業本来の目的を果たし継続していくための給付金ですのでそれ以外に使用してはなりません。

A型事業所でいうと障害者の方のお給料は適用外です。
A型事業所では障害者のお給料はすべて外部収入で支払うことがルールとして定められています。


ということは、A型事業所は各事業所の専門分野でどんどん営業し、どんどん売上げを上げつつ、訓練も平行して行い、一般就労を目指すための支援を継続して運営しなければならないのです。


さて、これができている事業所がいったいどれだけ存在するでしょうか。


うちもそうです。

うちで働く社員達は6時間〜8時間の長時間労働を基本としています。
社会保険も適用になってきますので、会社を維持するためにはどうしても外部収入事業活動に力が入ってしまいます。


私のように他業界から入り込み、これまでの経営や営業経験、事業そのものを福祉の世界で活かそうとする事業者だと、売上という結果は出せますが、どうしても福祉の面でのフォローが薄くなりがちです。
福祉業界での人脈も少なく、福祉系の優秀な人材確保、体制づくりが課題となります。



一方、福祉の面には強いが、売上げや訓練が伴わない事業所も数多く存在します。
私としては世の中こちらの方が多いという認識です。



これは私も気になっているのですが、他のA型事業所から移ってくる方の話を聞くと、大きく分けて5つの共通項があります。


・短時間勤務。
・日中自習。
・スタッフと話すだけで良い毎日。
・最低賃金以下の作業。(最賃以下の作業だが、最賃は出ている)
・事業所が営業活動していない。


5つ目の「事業所が営業活動していない」という点は、どちらかというと弊社に入った方が弊社に入ってから来客が多いと感じて後から気付いてくれる点です。


共通点を見ていただくとお分かりの通り、


外部収入が無い、もしくは少ない...

訓練等給付金を障害者のお給料に当てる...(→本来はダメ)

販管費を圧迫し、営業活動費用・訓練費用が捻出できない...

営業活動費が無いので営業したら赤字、投資したら赤字...

赤字になるから営業できない...

売上ががらない...

本来A型事業所としての目的が果たせない...


というデススパイラルに陥っているのだと考えられます。
※先に述べた通り、訓練等給付金を障害者の給料に当てることはルールとして禁止されていますが、この点についてはこれまで行政が一発レッドカードではなくグレーゾーンとしてきました。
2017年からの厚生労働省の方針では、これをかなり厳しく指導していくことが発表されてます。
(リンク 厚生労働省 社会保障審議会障害者部会 第83回 放課後等デイサービス、就労継続支援A型の運用の見直しについて)
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000147362.pdf


もちろん障害者を囲い込み、訓練等給付金のみを目的とした悪徳事業者もいるとは思いますが、それはここでは置いて置き、動きたくても経済面で動けない事業所が多くなってしまっているのではないかと推測しています。



このタイプは福祉畑で育ち、経営や営業経験が無いにもかかわらず、障害者のためを思い、彼らのために事業を起こした方が陥るパターンです。


うちにもその様な方がA型事業開設の相談に来ます。
熱いです。
思いをこれでもかと語るのですが、事業の中身がありません。


厳しい様ですが、このパターンはその事業所で働く障害者にも良くありません。
仕事をしなくても通うだけでお金がもらえるという誤った「当たり前」まで日常生活の中で認識させてしまうことになり、就労なんて実現するどころか遥か遠くの夢物語とになってしまいます。


事業者が前に進むことを諦め、後ろ向きに歩くことになると発生し始めるのが不正受給なのだと考えます。


いづれにせよ私は事業所に行くだけでその事業所が実態があるか、結果を出すために努力しているか、諦めてるか一発でわかります。

仕事の内容もそうです。
とても最低賃金を約束するA型では割りの合わない仕事かどうかすぐわかります。

営業しているのに社会の理解が無いなどの言い訳をしている事業所もありますが、他業界から見たら全然営業活動してるなんて思えません。
障害者が頑張っているから仕事が来るなんて思っている事業者はそれこそ障害者を差別しています。


障害者を何十人と雇用し、最低賃金以上のお給料が支払える売上を継続するには、訓練等給付金全て営業活動に充ててしまうくらいの勢いじゃないと正直やっていけません。


A型事業所は守りの営業ではやっていけないのです。


今後A型事業所が置かれる立場はこれまでの様に生易しく生かせてもらえる状況ではありません。

本当に力のある事業所だけが生き残る様になるでしょう。

ですので繰り返しますが今回自戒も含めこのプログを書きました。


立ち止まったり、後ろ向きに歩いている事業所がもう一度前に進むことができる様、このブログが少しでも役立ちます様に。









 

 

 


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